人工的に制作された工芸的な花木や造花の本質的価値

現代においては、盆栽や花の装飾において、生の植物に価値を見出し、人工的に制作された造花は価値が劣ると感じる方が多いのではないでしょうか。しかし本当に、人工的に作られた花や木の価値は劣るのでしょうか。今回はその問いについて、歴史を辿りながら考えてみたいと思います。

室町時代(1336〜1573)は、日本の宗教文化において非常に豊かな表現が発達した時代です。その室町時代に始まった、石清水八幡宮における「造花十二瓶(ぞうかじゅうにへい)」という装飾について注目したいと思います。「造花十二瓶」とは、神前に供えるための造花(人工的に制作された花木)を活けた瓶(かめ・つぼ)を12本並べた装飾のことです。この「造花十二瓶」は、石清水祭(いわしみずさい)という神事の際に用いられた重要な神饌(しんせん)装飾であり、装飾美の中に深い宗教性が込められています。

では、なぜこのような神聖で厳かな神事において、生の植物ではなく「造花」が用いられたのでしょうか。もちろん、自然の花木は美しいものの、儚い存在でもあります。一方で、神前に供える花には形を保ち、象徴としての意味を持つことが重視されました。造花であれば、時間や季節に左右されず、神前の理想的な「常春(とこはる)」を象徴することができたのです。

神道において「清浄」は最も大切な概念です。自然の花が枯れることは「穢れ(けがれ)」に通じる可能性があると考えられました。したがって、枯れない造花は神聖性を保つための手段でもあったといえます。また造花は、特定の形や色彩を繰り返し用いることで、儀礼の「かたち」や意味を固定・継承する役割も果たしていました。これは、装束や神饌の形式と同様に、神事の厳格な様式美を伝える手段でもあったのです。

さらに、室町時代には「有職造花(ゆうそくぞうか)」と呼ばれる絹製の造花が京都御所を中心に発達したことも知られています。これらの造花は、当初は公家への献上品として用いられ、後には雛人形の桜や橘といった装飾にその名残を見ることができます。雛人形とともに飾られている花木が造花であるのは、価値があるからこそなのだということを、あらためて認識していただきたいと思います。

A-BONSAI Miniは、まさに雛人形の花木装飾を手がける東京の職人が、一つひとつ手作業で制作している掌に乗る芸術品です。古来、日本人は造花に価値を見出してきました。その文化は現代にも受け継がれています。現代における造花の解釈を、歴史や文化に立ち返って再評価すべきではないでしょうか。工芸盆栽 A-BONSAI もまた、生木盆栽に負けない価値を持つ芸術品に昇華させたいと改めて感じています。

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A-BONSAI Moyogi Light(黒松 高30㎝)

J-和インターナショナルストア

A-BONSAI Moyogi Light(黒松 高30㎝)

¥79,200